第13章 子作り*
百之助はなぜそんな真似をしたのか。
自分の立場だって分かっているはずだ。
なのに、なぜ──。
【すず】
・・・・異常だわ。貴方たち二人はデキてたっていうの?いつから?いつから私を騙してたの?なんで抱けもしない私なんかと結婚したのよ・・・・ひどいじゃないッ こんな形で子作りしなきゃならないなんて屈辱よ!!
【百之助】
アンタを騙してたわけじゃない。世間体を考えたら疎まれるのは目に見えてる。
【すず】
貴方に聞いてないわよ!慶次──・・・・なんで何も言ってくれないの?
百之助は俺とすずの口づけをみて気に食わなかったのかもしれない。全部俺のせいだ。
今更後悔しても遅いがここは何とか丸く収めなくちゃならない。
百之助が好きだったこと。
百之助しか愛せないこと。
百之助しか抱けないこと。
どちらにせよすずを傷つけることには変わらない。
百之助を守るために演じるんだ。
すずを納得させるために。
波音を立てないように穏やかな口調でゆっくりと話す。
【慶次】
結婚する前に言っただろ。俺には忘れられない一番大切な奴がいるって。・・・・それが百之助。たった一人、俺が愛した男だ。
【すず】
・・・・それって、既婚者とか亡くなった人じゃなかったの?私てっきりお姉ちゃんだと・・・・。
【慶次】
お前は昔からお姉ちゃんと比べたがるよな。才能あふれてお淑やかでおまけに容姿端麗だ。だけど俺は今まで女性にそういう感情を一度も抱いたことがないんだよ。
【すず】
・・・・じゃあ、なんで私に結婚しようなんて言ったの?私のこと愛してないんでしょ?なんで?私は利用されたの?こんなに慶次のこと好きなのに・・・・っ。
女を愛したことが一度もない。
その言葉だけですずはポタポタと大きな雨粒の涙を流し始める。
泣かせるつもりじゃなかったから罪悪感に蝕まれる。
偽りの涙じゃないから余計につらい。
今まで俺のことをどれだけ慕ってくれていたか分かっているから。
涙を拭ってやろうと手を伸ばすと振り払われる。
【すず】
・・・・っ、触らないで!
【慶次】
すず。
嫌がって抵抗する身体を抑えつけるように額と額をくっ付ける。