第11章 外食*
すずと婚約し、家に住まうようになれば当然、百之助との時間が減るわけだ。分かってはいたが、こんなに近くにいるのに気軽にお触り出来ないなんてひどい拷問だ。
それにすずは俺の気も知らないで、相手にしないものだから百之助に喋り掛けているし。
【慶次】
(あ~・・・・くそ。茶屋にでも時間ずらして逢瀬するか?)
仕事をしながらそんな魂胆を考えていると、仕事場に戻ってきたすずが話し掛けてきた。
【すず】
ねえ、慶次。今話しかけても平気?
【慶次】
ああ。
【すず】
この後なんだけど、百之助くんと3人でご飯食べに行かない?
その言葉にピタリと手を止める。
──百之助とご飯?
そう言えばしばらく行ってないな。でも百之助は許可したのか?でなけりゃこうして提案してくるのはおかしいし。
【慶次】
・・・・百之助の許可は得たのか?
【すず】
うん。私と百之助くんが一緒じゃ世間的にマズいでしょ?だから貴方も一緒にと思って。
【慶次】
(マズいって、百之助とすずに限ってあり得ないだろ。まあそりゃ、俺の目から見ただけだしな)・・・・分かった。もう数分待ってろ。
外食は久しぶりだったこともあり、当てのあるすずに連れられとある洋食店に入る。
【慶次】
(洋食はつい最近入ってものだから、文字だけじゃ良く分からんな・・・・。)
見慣れない品書きに頭を悩ませながら、すでに決まったような顔をしている二人に話しかける。
【慶次】
百之助は何にするのか決めたのか?
【百之助】
トンカツ。
【慶次】
すずは?
【すず】
オムライスにしようかなって。ここのオムライス、卵がふわふわで美味しいって評判を聞いたから一度食べてみたかったの。
【慶次】
そうか。すみませ~ん。注文いいですか?
二人は無難にもあまり冒険をしなかったので、俺はドリアと聞きなれない発音のものを注文した。