第2章 冬の時期
そこに立っていたのは例の表情のない子供だった。
少年は銃を下ろすと、感情のうつらないぼんやりとした目で遠くの方向を見ている。同じく目を凝らしてみると野鳥が倒れており、あの少年が一発で仕留めたのかと驚いてしまう。
いつの間にかかなり少年に近付いており、ゆっくりとその真っ暗な眼が持ち上がる。
睫毛が長く、
少し吊り上がった目尻、
黒い大きな目。
虚ろにみえるのは変わらないが、しっかりと目と目をとらえているように見えた。
【慶次】
こんにちは。その銃、誰かに教わったのか?
そう聞くと口を開かず、首だけを横に振る。
そのまま何も気にしない様子で野鳥が倒れている方へ歩き出してしまう。
【慶次】
(何度か顔を合わせてるんだが、なかなか縮まらないもんだな)
今日は上手く行きそうな感じがしたのだが、いつも通りの無反応で少し悲しくなる。
俺は小さい子供が好きで、仕事の合間とかに近所の子供たちと一緒に遊んだりする。これはただ仕事をサボっているわけじゃなくて、ご近所付き合いや創作活動に関係する。
商売がてら評判や交流も大切になってくるし、子供たちは純粋に色々なものを発見し、教えてくれる。
まあ、一番の目的は仕事でも勉強でもなく、ただ小さい可愛い子たちと戯れたいだけだが。
なかでも少年は気になる存在で、何とか興味を持ってもらおうと話し掛けたり、遊び道具を見せたりして誘ってみるも、そっぽを向かれて味気のないまま終わってしまう。
今度こそはと思って話しかけてみたものの、今日も収穫を得ることは出来ないのか。