第7章 丁稚奉公
兄貴はなにを思って突然、そう言ってきたのだろうか。
【慶次】
(──まさか、部屋でやっている音を聞かれたとか・・・・)
内心激しく動揺していると、廉一はゲラゲラと腹を抱えて笑いだす。
もしや適当に言っただけなのか?
兄貴のことだからありえる。
俺があまりにも百之助に構いすぎるからそう推測しただけなのかもしれない。
【松風】
慶次様は、百之助様という方のことがお好きなんですか?
【廉一】
まだ9つくらいの子供だけどな。こいつの子供好きには参るぜ。暇があれば近所の子供と戯れてるし。・・・・・・・・で、どうなんだよ?
【慶次】
どうって言われても・・・・。
兄貴は子供相手に本気になっている俺を笑いたいのか?
男相手に本気になっている俺を馬鹿にしたいのか?
それだけなら構わない。
人が誰を好きになろうが関係ない。
百之助にはまだ言えない。
親にバレたらそれこそ厄介だ。
兄貴はタチが悪いから、脅しにつかわれるくらいなら開き直ってしまった方がいい。
【廉一】
そう警戒すんなよ。別にお前の趣味を否定するつもりはねえよ。子供とか百之助はありえねーけど、俺だって女みたいな綺麗な男を見りゃときめくからな。お前は昔っからモテるのに天然たらしで女心いじくって振りまくってるだろ?百之助が家に来てから妙にお前の調子は良いし、なんかあると思ったんだよ。
【慶次】
兄貴・・・・。
どうやら兄貴は兄貴なりに心配してくれていたらしい。
その言葉からは悪意は伝わってこない。
こんな兄貴だけど伝えても良いだろうか。
こんなんだけど・・・・。
【慶次】
笑いネタにはならねえからな。
【廉一】
おっ、認めるか。ようやくお前にも色恋の花が咲いてくれて俺は嬉しいよ。チンポが使いもんになって良かったな。
【慶次】
やっぱ見てたんじゃねえかっ!
結局どこへ行っても締まらない兄貴だ。
またケラケラと笑い出し、俺も兄貴と同じように豪快に酒をあおる。
だがその瞬間、気付かされる。
酒を飲むのは初めてだったということを──。
バタッ