第7章 丁稚奉公
【慶次】
(ここが花街か・・・・。初めて来た)
兄貴に誘われ、夜の花街にやって来た。
本当はあまり気が進まなかったが、百之助のこともあり少し気持ちを落ち着かせたかったこともある。
百之助とは3日に1回の間隔で会っている。
毎日会いたいけど、そうしたら気持ちに気付かれて、避けられたりしたら困るから極力控えめに我慢している。
俺が顔を出すと百之助は表立って喜びはしないが、少し笑って、猫みたいにすり寄ってきて、俺の膝の上に座る。
百之助は俺のことどう思っているのだろう?
お兄さん、お父さん、それとも・・・・、百之助のことを考えるだけでムラムラする。
【遊女】
ねぇ~お兄さん、こっちで遊んでいかん?
【慶次】
・・・・・・・・。
花街は多くの人で賑わっており、木の格子の隙間から白い手が伸びてくる。
白粉を塗った顔。
紅い唇。
派手な着物。
揺れる花飾り。
場違いな俺は手を取られないように腕を組み、少し俯き加減で兄貴を見失わないように歩く。兄貴のお気に入りがいるという廊に着くと、今にも抱き着きそうな勢いで舞う上がった声をあげた。
【廉一】
松風。会いたかった。
【松風】
お待ちしておりました、廉一様。後ろの方は見ない顔ですね。どのようなご関係なんです?
出迎えてくれたのは一人の遊女。格子ごしにいた女よりも煌びやかな格好をしていて、町でみる女より色気を醸し出しており、妖艶に微笑んでくる。
【慶次】
(・・・・兄貴が惚れるだけある綺麗な人だな。)
【廉一】
前に話してた俺の弟だ。お前に一目見せたかった。
【慶次】
はじめまして、廉一の弟の赤松慶次と申します。
お互い自己紹介を済ませると、廊の中に案内させられる。
後ろを振り向いたとき、松風の頭には俺が螺鈿した笄が飾られており、使われていることに嬉しく思う。