第7章 丁稚奉公
百之助は相変わらず一人でいることが多く、それが一番気楽で良いらしい。
そんなことを言いつつ、俺が絵を描いていると背中に身体を預けてきたり、懐に潜り込んできて、懐いてくれる百之助は弟みたいで本当に可愛らしかった。
それなのに俺は──。
【慶次】
はぁっ、・・・・・・・・くっ・・・・。
純粋を汚すように手の中に性欲の塊を吐き出す。
【慶次】
(朝から何やってんだ、俺・・・・)
自分は淡泊の方だと思っていた。
兄貴や友人に比べて色恋には疎いし、女にべた付かれてもいい気分って奴にはならない。百之助に触れて以来、俺の身体は完全におかしくなった。
【慶次】
(百之助が欲しい・・・・)──・・・・だ、誰だッ
もう部屋にはいない百之助を恋しく思っていると、急に物音がして白濁液を拭きとり着物の襟を正す。
ひょっこり顔を出したのはうちの兄貴。
廉一は俺のそんな慌てた姿をみた途端、ふき出したようにゲラゲラと笑いだす。
【廉一】
だ、誰だッ──って、すんげえ~顔で睨むなって。ははっ、お前もそんな顔するんだな。あ~、腹いて~。
【慶次】
う、うるさい。何だよ、俺に用があって来たんじゃないのか?
腹を抱えて笑う兄貴は図々しく俺の部屋に入ってくると、周りを見渡し、遠慮も許可もなく葛籠箱をのぞき始める。
【廉一】
やっぱお前は器用だな。まだ親父に認められねえのかよ。
【慶次】
兄貴が道草してるからだろ。本来は兄貴が店を継ぐはずなのに・・・・。
そういうと笑うところじゃないのにまた笑い出す。
兄貴はどうして真面目に働かないんだろう?
螺鈿細工の腕だって、商売屋の跡取りとしてだって俺が一目置いているところがあるのに、花街に通い続けて親父との関係を悪くしている。
花街に行くこと事態、親父はそれほど咎めていない。
ただ、弟の俺に気を遣っているようには見えないし、本当に好きで遊んでいるというだけなら親父との関係を悪くせず、真面目に働けばいいのにそうはしない。