第2章 冬の時期
俺の家は祖父から代々、螺鈿細工をやっている。
螺鈿(らでん)とは何かって?
螺鈿というのは、貝殻の内側のキラキラした光沢部分を薄くして形に切って、漆器などの表面に嵌め込んで装飾する伝統工芸の一つだ。
俺も父のような立派な螺鈿職人になりたいと日々修行している。将来の夢はもちろん螺鈿職人だ。
細かく形に切った貝殻の細片。
それを彫刻した部分に一つ一つ乗せていき、全体の色合いを見ながら丁寧に嵌め込んでいく。
貝殻の内側の光沢部分にも色味がある。
青や赤、紫、黄、緑、銀、黒など多彩な輝きを持ち、貝によって様々な種類があるのだ。これが形に成っていくと結構楽しい。
【慶次】
ふぅ・・・・。今日はここまでにしよう。
作業の手を置き、誰にも見られないように机の引き出しの中に隠す。
この螺鈿細工は父にも内緒にしており、誰も知らない俺だけの秘密だ。
そうと決まって画帖と鉛筆を手にとり、町の外へ出ると少し駆け足で走った。