第5章 猫*
百之助は俺に視線を預けたまま、何を考えているか分からない表情のまま黙って見ている。
俺の指は甘かった。
いや、百之助のその口にあるものが甘かったのだろうか。
舌が痺れて、ひどく蕩けそうだ。
もう一度、その口の中に指を入れたい。
もっとぐちゃぐちゃにして、乱れさせて、いっぱい溢れさせて。
【慶次】
百之助・・・・。あんまり心臓に悪いことするなよ。俺だって男なんだ。
【百之助】
俺だって男だ。でも、どう触っていいのかか分からなかった。
俺だってできることなら触りたい。
でもそれ以上触ると、俺の凶悪な部分が何をしでかすか分かったもんじゃない。
触りたい。
触りたい。
触りたい。
触りたい、けど百之助より大人だ。自制しなきゃならない。その先が危うい道だってことは俺でも分かる。踏み込んだことはないけど、その意味を知るのが恐い。
でも・・・・。
【慶次】
俺に、触ったり触られたりするのは好きなのか?
おそるおそる尋ねるその声は、動揺して少し震えてしまった。
家族に対する愛情。
これはそれ以外でもないでもない、ただの性欲だ。
今まで経験したことのないくらい搔き乱される感情。
はじめて百之助で立ったあの日から、百之助のことしか考えられなくなった。
百之助に欲情して、自分のものにしたいと思ってる。
こんな小さい子供相手に、俺は欲情している。
自分が情けない。
でも、好きになっちまったんだから仕方ない。
【百之助】
好きなのかはよく分からない。けど嫌じゃない。風呂屋に行ってももうしてくれないから、どうしていいのか分からなかった。前みたいに・・・・触ってほしい。
【慶次】
っ。
それは十分過ぎるほどの引き金だった。