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祝福されないドロップス【尾形百之助】【BL】

第24章 願い<完>




風呂場をがらりと開けるが、すでにもぬけの殻だ。出て行っていないことを祈りながら居間に行くと、俺は思わず母親を睨んでしまった。


【赤松母】
慶次・・・・。

【慶次】
お袋・・・・まさか、帰らせたんじゃないだろうな・・・・?

【赤松母】
っ・・・・。


低い声を鳴らすと母親はビクッと震え出す。居間や台所には家族の姿が全員あり、一人一人の顔を確認してようやく確信する。


【慶次】
俺が忘れたことを都合よく利用してたんだな、お前らは・・・・。


ずっと思い出せなかった。
忘れちゃならない俺の一番大事なかけがえのない人。
だがコイツらにとっては疎むべき存在であり、祝福とかかけ離れた言葉でアイツを追い出し、アイツは帰ってくる場所を失った。

俺が全部忘れてしまっていたから・・・・。


【慶次】
お前ら全員共犯かよ・・・・。俺は自分が情けないぜ。自分が一番守りてえもん忘れて、ここ(心)に居なきゃならない存在を忘れて、自分が・・・・憎いっ。


声を聞いても思い出せなかった。
顔を見ても思い出せなかった。
頭を撫でても思い出せなかった。

アイツをどれだけ傷つけたのか計り知れない。


【慶次】
・・・・俺はもうこんな薄汚いところに居たくない。アイツを追いかけて、アイツと自由に二人で暮らす。・・・・じゃーな。

【すず】
待って!

【慶次】
離せ。

【すず】
待ってよ、慶次ッ

【慶次】
うるせえな!


腕にしがみ付いてきたすずを突き飛ばし、それを見ていた はワンワンと泣き出して居心地が悪くなる。


【慶次】
すず・・・・お前も分かってんだろ・・・・、お前のことなんて鼻から──

【すず】
分かってるわよそんなの!最初から全部・・・・嘘でも嬉しかったの。他の女に得られない特権だったから・・・・。

【慶次】
・・・・・・・・。

【すず】
アナタがここを出て行く必要なんてない。私は悲しかった・・・・百之助くんが立派になって戻って来たら、ちゃんと二人を祝福してあげようってみんなと決めてたから・・・・。

【慶次】
・・・・!




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