第24章 願い<完>
風呂場を出て行って、手に持っていた欠けていた螺鈿札をもう一度見る。
【慶次】
・・・・ちゃんと、直してやらんとな。
役目を終えた螺鈿札を修復したらまた大事に持ってくれるだろうかと思い、懐にしまう。仕事場に戻って後片付けをし、ふと思い立って自分の部屋の中にある葛籠箱を開ける。
【慶次】
・・・・おかしいな。やっぱり・・・・足らない気がする。
明確な違和感に気付き、2階の屋根裏に久々に登ってみる。平行の道をゆっくり歩く程度なら傷口は病まないが、階段の上り下りは傷が妙に突っ張って痛い。
【慶次】
くそ・・・・手当たり次第ってのもな・・・・。
わりと新しめの葛籠箱を開けて行き、画帳がないか確認する。奥の方に行くと少し違和感のあるものの配置に首を傾げ、適当にまた箱を開ける。
【慶次】
・・・・あっ。
そこには俺が初めて親父に認められた螺鈿細工の蒔絵があった。どうしても救いたい母親・・・・いや、親子がいて、そこ子と一緒に手鏡に螺鈿を・・・・。
一枚の絵をとるとその下にも破られた画帳があり、その絵にはどれも同じ子供が描かれている。
【慶次】
そういやお袋・・・・ が画帳を破ったって・・・・。
初めて家に帰った時、バラバラになっている画帳のことを話したらお袋は が誤って破ってしまったと話していた。全部元に戻したといったがそうじゃなかった。
これは意図的に誰かが破いたものだ。
【慶次】
この子の顔・・・・どこかで・・・・。
丸坊主の少年。無表情だが次第に柔らかくなっていって、紙芝居を見ているかのように少年は何かを語りかけてくる。
・・・・忘れちゃったの?
気付けば俺は涙を流していて、仕切りに流れるものを袖で乱暴に拭う。俺はどれだけこの少年を大切に想っていたのだろう。よほど特別に想っていたのか、自分でも驚くくらいその少年のことを描いている。
【慶次】
・・・・なんだよ・・・・、そういうことかよっ。
俺は慌てて階段を下りて、風呂場に向かった。