第23章 忘れもの
身体を動かすと痛い。
身体が固くて上手く飯が食べれない。
一人で厠にも行けない。
顔を洗うのも、着替えるのも、風呂に入るのもできなくて、一日が異様に長くて辛い。
【慶次】
手さえ動かされば・・・・。
【弥彦】
自慰、ですか?
【慶次】
なんでそうなるんだよ。性欲は皆無だから全く困ってない。
【弥彦】
え~、実は美人の看護師さんに抜いてもらってるんじゃないんですか~?
【慶次】
美人な看護師なんていたか?どいつもこいつも体型いいのばっかりしか・・・・。
【看護師】
だれがデブですって?お注射刺しますわよ?
口だけは達者に聞けるようになったため、代わり代わりにくる見舞い人との会話を楽しむ。
ここの看護師はふくよかで優しそうな顔をしているが、中身はちょっと怖い。
【すず】
食べやすいもの作ってきたわ。
【慶次】
ああ、助かる。
【 】
も食べる~。
【すず】
食いしん坊さんね。 ちゃん、お父さんにあ~んしてあげたら?
に食べさせてもらいながら、半分は自力で手を動かして口の中へと運ぶ。食べるという作業だけで汗を流し、タオルで体を拭いてもらう。
【すず】
そういえば頼まれていたものを持ってきたわ。画帳と鉛筆、だったわよね。
【慶次】
ありがとう。あれ・・・・家に書き途中なのなかったか?それでも良かったんだが・・・・。
【すず】
あれはだって、螺鈿のために描いていたものでしょ?今はリハビリだから、新しいのだって良いじゃない。
【慶次】
まあ、そうだな。
【 】
も、お絵かきする~。
【慶次】
よし、いいぞ。何を描くんだ?
【 】
えっとね~。ねこちゃん!
画帳全体をつかって迫力ある線を描き、俺も負けないように芯を動かす。
絵を描く、箸を持つだけで、良い運動になりそうだ。
みるみるうちに画帳は埋まっていき、自分一人でも松葉杖ついてなら一人で歩けるようにもなってくる。
【慶次】
早く退院して、仕事に戻らなきゃな・・・・!
俺は未来に馳せて、リハビリに励んだ。