第23章 忘れもの
チュンチュン...
【慶次】
・・・・・・・・・・・・。
また目を覚ますと、数年ぶりに見たことがあるような白い天井。白いカーテン。黄色い花。
息苦しい呼吸マスクを外すと、腕に繋がれた配線を目にする。
【慶次】
(俺は今、どこにいる・・・・?)
身体を起こそうにも思った以上に重く、ビリっと右腰の辺りに傷を開くような痛みを覚える。
今さっきまで何か夢を見ていたような気もするのだが、思い出せそうにもなく、誰かいないかと声を上げる。
【慶次】
・・・・・・・・だ・・・・か・・・・。
声が擦れて思うように声が出せない。そう思ったらひどく喉が渇いて、この腕に繋がっている配線のせいだと思い、力を入れて引き抜こうとする。
【看護師】
あっ、赤松さん。無理矢理引っ張ったりしたら駄目ですよ。いま目が覚めたんですね。お医者さんを呼んでくるので、何もしないで待っていてください。
【慶次】
・・・・・・・・ま・・・・て・・・・。
看護師はそのまま行ってしまい、数分後、医師がやってきて、ひんやりとしたゴムと金属のようなものが胸にあてられる。
【医師】
胸の音も異常ないですね。今からご家族を呼ぶのでお待ちください。
【慶次】
・・・・・・・・み・・・・ず・・・・。
【看護師】
お水ですか?今の状態では飲めないので、口の中を湿らせますね。口を開けてください。
湿った水分が口の中を潤し、少し楽になる。
家族が来てから状況を聞かされ、俺は長いこと眠っていたらしい。
ひどくうなされて。
【慶次】
(じゃあ・・・・あれは、なんだったんだ・・・・?)
何かを必死に忘れようとしていた。
でもそれが何なのか、何のためなのか、思い出そうとしても思い出すことが出来ない。
夢の話だからと思い、俺は家族や医師にも言わず、一人で考え続けた。