第22章 赤札
・・・・何をしたって続かない。
途中まで貝殻を嵌め込むのだが、アイツの顔がチラついて手に付かなくなる。
なんで俺だけこんなのうのうと生きているんだ?
・・・・なにが、俺は簡単に死なないだよ。
・・・・なにが、必ず帰ってくるだよ。
俺があんな小さな小指の骨だけで納得すると思っているのか?
本当は生きているんだろう?
思い切り抱きしめてやるから、もういい加減焦らさないで帰って来てくれ。
俺は生きることに価値が見い出せず、ぼんやりと天井を仰ぐ。俺を心配して来てくれている家族はいるが、アイツは一向に姿を見せない。
【赤松父】
──慶次。もう彼のことは忘れろ。その方がお前の身のためだ。
【赤松母】
──そんな情けない格好しないで、前を向いてしゃきっと生きなさい。
【弥彦】
──今の若旦那は格好悪いです。昔の男なんて忘れて、俺に恋しませんか?なんちゃって。
【すず】
──私たちより誰よりも愛する彼を失って、辛くて立ち直れないのも分かるわ。でも、何より生きてるあなたがそんな顔をしちゃダメよ。彼のことは忘れて、新しい恋をすればいいじゃない。
【 】
──おとと、元気出して?
【百之助の母】
──ずっと、ずっと息子のことを想っていてくれてありがとうございました。でも、これからは貴方のために生きてください。息子はもう十分あなたから愛情をもらいました。もう息子のことは忘れて、もっと大切な道を歩んでくださいな。
・・・・どいつもこいつも忘れろ、忘れろ、忘れろ、忘れろって。忘れられるわけねえだろ!
こんなに好きなのに。
こんなに愛してるのに。
どうして生きるために忘れなきゃいけないんだ。
生きるために、忘れて・・・・生きて、忘れたものをまた埋めていけばいいのか?
俺はまだ生きていた方が良いのか?
お前のために。
俺が生きて、俺が生きるために。
お前を・・・・彼を・・・・息子を・・・・手放しちまうんだ。