覚えているのは、好きだったってこと。【気象系BL小説】
第1章 声が聞こえる。
こうして雅紀がいなくなって1人になるといつも暗い気持ちになる
そんな考えを払拭するために、仕事をしようとパソコンを開いた所で俺の目の前は真っ暗になった
目を閉じる直前に聞こえたのは優しく俺の名前を呼ぶ、男の声だった
『翔くん、また倒れたんだって?
勉強のしすぎだ、バカ』
『バカって…今たくさん勉強しとかなきゃダメだってあなたも分かってるでしょ?』
『だとしても倒れるまでやる必要ねぇだろ、ほら休め』
乱暴な口調とは裏腹に、優しく俺の頭を撫でる綺麗な手
その温もりがひどく懐かしくて何故か涙が出た
「翔ちゃん!」
大きな声で呼ばれてはっと目が覚める
ぐるりと部屋を見渡すと、どうやら病院のようで。
ベッドに寝かされている俺と、心配そうに俺を見つめる雅紀
「雅紀…ど、して病院…?」
「帰ったら倒れてたんだよ、翔ちゃん
名前呼んでも起きないし、昼ご飯食べた形跡も無くて…
そんなに長時間目を覚まさなかったこと無かったから…」
「そう…雅紀、泣かないで…
大丈夫だから、心配しないで?」
頬に流れる涙を拭おうと雅紀の方に手を伸ばすと、その手を掴まれ逆に俺の頬をなでられた
「大丈夫に見えないよ、最近の翔ちゃん
だって今、泣いてるんだよ…?」
そう言われて初めて自分も涙を流していることに気付いた
「夢でも見た?それとも記憶?
辛いこと、思い出しちゃった…?」
辛いこと…?
確かに夢にしてはリアルな会話と感触だったからもしかしたら記憶かもしれないけど、決して辛いものでは無かった