覚えているのは、好きだったってこと。【気象系BL小説】
第3章 雅紀の恋人
お台場で何かしようとしていた訳では無いらしいのでとりあえず近くの建物に入っていくつかの店を見て回った
その内の1つの店で大学生っぽい若い女の子たちがきゃっきゃと楽しそうにはしゃいでいた
少しだけ聞こえてしまった会話で何やら有名な海外タレントが来日して、今まさにお台場で撮影しているらしい
翻訳の仕事をしているからある程度の海外タレントやアーティストは知っているので誰なのか確認したい、と伝えると翼くんも興味ある!と言うので様子を見に行くことになった
女の子たちが見かけたと言っていた場所へ向かうと人だかりが出来ていた
すごい人の数だったがわずかな隙間からカメラやマイク、照明などが見えたので撮影隊に間違いなさそうだ
「…人多すぎじゃない?」
「だね、翔くん見えた?」
「全然。何となく頭だけ見える感じ
金髪だから多分そうだと思うんだけど…」
タレントだと思われる人の正面にはいるけれど、スタッフに囲まれているしさらに見物客の数も多いので背伸びをしても中々見えなかった
翼くんも全然見えないと言うし、人も減りそうにないので段々俺たちの興味も薄れてくる
「どうする、翔くん」
「…見えそうに無いしもう行こうか?」
「ふふ、そうだね」
諦めて踵を返し先ほどの店に戻ろうとした時、突然強い力で腕を引かれた
「!」
「っ、翔くん!?」
思わずよろけそうになったのを咄嗟に翼くんが支えてくれた
何が起きたのか分からず振り向くと俺の腕をしっかりと掴む、日本人としては眉毛もまつ毛も濃くはっきりとした顔立ちの男の姿があった
「何するんですか!?」
翼くんは俺の身体を支えた状態で未だに俺の腕を掴んだままの男を睨みつける