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覚えているのは、好きだったってこと。【気象系BL小説】

第2章 カウンセリング



日本特有の花とはいえ今や海外でも咲き誇っている桜は、外国人に写真でも絵でもモデルとして使われることは多い

しかもおそらくソメイヨシノと思われる桜が夜に咲いている様は、日本人でも外国人でも心を奪われるようで、決して珍しいと思うような組み合わせでも無い


それでも、どうしてもその絵から目を離せ無かった





『翔くん、見ろよ。桜だぞ』

『本当に好きだよね、桜描くの』

『当たり前だろ、お前の名前だからな』

『ふふ、何それ…?』





あぁ、どうしてこんなにもこの絵から目を離せないのか分かった


「櫻井さん…?」


伺うように名前を呼ぶ二宮先生を真っすぐ見つめる
こんなこと言ったって信じてもらえないだろうけど、誰かに伝えたかった

二宮先生なら、端から馬鹿にしたりはしないだろうから



「この桜の絵、俺のために描いてくれたんです
俺の名字が“櫻井”だからって…」



俺の言葉を聞いた二宮先生は目を見開いて、ひゅっと息を吸い込んだ

そして前かがみになってファイルを机に置く

その手は細かく震えているように見えた


「…誰、が?」


絞り出したようなその声は小さくて震えていたけど、しっかり聞こえた

俺だって、きっと誰だって1番最初に思いつく疑問だろう



「…ずっと俺に話しかけてくれていた人です
優しい声で俺を翔くんて呼んでくれて、優しい声で俺の頭を撫でてくれた…

きっと、ずっと傍にいてくれた人…」

「顔は、思い出せますか…?」

「いいえ…それは全く…」


小さく首を横に振ると二宮先生はそうですか…と呟いて姿勢を直した

二宮先生が何かを言おうとした時、カウンセリング終了を告げるアラームが部屋の中に鳴り響いた



結局何も言わずにアラームを止めると、ファイルを棚に戻して外へ出る扉を開いた

時間が来てしまった以上、何も聞くことが出来ずに俺も無言で軽く会釈をして出ようとした
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