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覚えているのは、好きだったってこと。【気象系BL小説】

第2章 カウンセリング



「趣味は正直無いです。暇なときは本を読むか雅紀と出かけますね
…あ、雅紀の話になっちゃいました、」

「ふふ、相葉さんとずっと一緒にいるんですもんね
では仕事は今何をしてますか?」

「あ、翻訳の仕事をしています。主に本とか映画とか…
基本的には家のパソコンで作業してます」


俺の話を聞きながら二宮先生はファイルに何かをメモしていく


「へぇ、翻訳ですか。すごいなぁ
高校生からの記憶失くしてるのに苦労しませんでしたか?」

「あぁ…雅紀が言うには元々すごい英語とかを勉強してたみたいで、英文とか読むと頭に入ってくるんですよね
忘れてない、というか頭が覚えてる、というか…」

「頭が…?
自転車とか身体が覚えているのは手続き記憶といって忘れづらかったりしますけど、勉強とか思い出はエピソード記憶といって忘れやすい記憶なんですけどね…」

「そうなんですか?」


二宮先生は“記憶について”と書かれている本を見せてくれて、確かにそこには手続き記憶やらエピソード記憶やら書いてあった


「まぁ、でも櫻井さんは中学生までは覚えてますし一概には言えないかもですけど」


相変わらず笑顔を絶やさないまま、二宮先生は違う本を見せてくれた


「絵、ですか…?」


それは美術の教科書のように風景画や人物画などがたくさん載っている本だった

表紙や絵の横に書いてある説明は全て英語で書かれていて、読んでみると海外の画家やイラストレーターの作品のようだ






その中で1枚だけ、どうしても目が離せない絵があった

説明も作者の名前もないその絵は、見ているだけで心を掴まれたように目を逸らすことが出来ない


深い暗闇の中に立っている1本の桜
右上には少しも欠けていない満月が浮いている
淡い桃色と輝く黄金、そして吸い込まれそうな漆黒
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