【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第6章 Untainted, Unbroken ※
「命令の通りにする。でも、そういう人じゃないから尊敬しているんだけど」
「そんなの、わからないじゃない。サクラは団長のすべてを知っているわけじゃないでしょ?」
「そうだけど」
「けっきょく、“男”は下半身に正直な生き物なんだから」
「そうかなぁ・・・?」
物知り顔で語る同期の言葉は、サクラにはよくわからなかった。
男性経験がないのはもちろん、大人になってからまともに恋愛をしたことがない。
14歳から兵士になるため訓練に明け暮れる毎日だったから、しかたのないこと。
ただ、それはここにいる者も同じはずなのだが・・・
「しかも、サクラにはハンジ分隊長もいるしね!」
「は?」
まさか、ここでハンジの名前が出てくるとは思わず、カップを落としてしまう。
「同期の中じゃすごい噂になっているよ。ハンジ分隊長がサクラを特別扱いしているってこと」
「何言ってるの?そもそも、分隊長は」
言いたいことは、みんな分かっているのだろう。
同期の一人がサクラの言葉を途中で遮ると、肩に手を置いて意味深に微笑んだ。
「まぁ・・・イロイロな恋愛があるから」
・・・は?
まったく、冗談なのか本気なのかわからない。
ハンジ分隊長は尊敬すべき上官で、第二分隊所属の兵士は平等に目をかけてもらっている。
そういう邪推はやめてもらいたい。
サクラが不服そうにしていることを知ってか知らずか、同期はアルバートの肩を叩いた。
「だから、アルバートがサクラを狙ってもダメだよ。エルヴィン団長とハンジ分隊長を相手にしなきゃならないんだから」
「バッ、バカ!別にそんなんじゃねぇよ!俺はほかに好きなヤツが・・・」
言いかけたが、慌ててやめた。
しかし、それを聞き逃す女子達ではない。
アルバートの好きな人を聞き出そうと、一斉攻撃を始めた。
「・・・・・・・・・・・・」
サクラはその輪には加わらず、一人談話室を出る。
もうこれ以上、この会話に加わっていたくなかった。