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【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第21章 感謝のShort Story




「いえ、その・・・兵長も女性の事を想像しながら自慰をするんですか?」

「あ?」

「すいません! 変なことを聞いてしまって」


土壇場で変えた質問が、さらに不適切なものだったということに気が付き、もう土下座をしたい気分だ。

リヴァイは、慌てて謝るエレンをしばらく見つめていた。
そして、ポツリと口を開く。


「以前はな・・・だが、もう長いことしてない」

「え・・・?」


ラベンダーの1本を手に取り、鼻に近づけてその香りを嗅ぐ。
優しく、清らかで、一度嗅いだら忘れることのない香り。


「この先、誰かを抱く事もないだろう」


この香りが再び最愛の人のもとへ導くまで・・・


リヴァイは花を置き、椅子から立ち上がった。
そして、言葉を失っているエレンを一瞥する。


「なんだ、その呆けた目は。俺が枯れたジジイとでも言いてぇのか」
「いえ、そうではありません! ただ・・・」
「期待外れな答えだったか。悪かったな」


だが、抱きたいと思う人間はもういない。

この手が求めているのは、たった一人の肌。
この身体が求めているのは、たった一人の温もり。

それを失った今、自分自身を慰める気にもなれない。
もうずいぶんと火照りすら感じていない。


「まあ・・・お前は兵士や“化け物”である前に、一人のガキだということだ」

「兵長・・・」

「あまり思いつめるな」


椅子から立ち上がり、ドアの方に向かって歩く。

その背中を見て、やはりこの人は凄い・・・と思った。

計り知れない悲しみを抱えてもなお、平然としながら巨人と戦っている。
なんと強い人だ・・・

生涯、この人にかなうことはないだろう。

しかし、同時に・・・


初めて、その背中が“小さく”思えた。


こんなに強い人間でも・・・

計り知れない悲しみがあるのか、と。


「オレ・・・絶対にサクラの事を忘れません」


ラベンダーをそばに置いていれば、きっといつかまた出会えるような気がする。
その時に胸を張れるよう、まずは自分のすべき事をやる。



巨人をこの世から駆逐してやる。
一匹残らず・・・!



ラベンダーを握りしめ、緑色の瞳に狂気を漂わせる。


そんな15歳の少年を、優しい香りが包み込んでいた。





第7.5章 『 Lavender's Blue 』 Fin.



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