【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第21章 感謝のShort Story
調査兵団の兵舎に戻ってすぐ、団長室へ向かった。
彼がやってくることは予測していたのか。
ドアをノックすると、数秒もしないうちに「入れ」という声が聞こえてくる。
リヴァイは瞬きをひとつしてからノブを捻った。
「よく戻ったな」
ドアが開ききるや否や、待ち構えていたようにエルヴィンが口を開く。
これまでずっと仕事をしていたのだろう。
机の上に広げた書類から目を離し、走らせていたペンを止めた。
「ケガがなくて何よりだ、リヴァイ」
いつもと変わらない口調の団長。
しかし、その碧眼は安堵の色を浮かべていた。
“ 壁外に行きたい ”
今思えば、リヴァイが自分からそう言ったのは初めてのことだった。
エルヴィンに“勧誘”されて調査兵団に入った彼にとって、壁外に行くのは義務のようなもの。
彼なりに壁外では何かを感じ取っているようだったが、自ら望んで“行きたい”と申し出たのは初めてだった。
しかも、その腕に桜という花の資料を抱え、ある兵士と二人だけで行くと言い切った。
「で? どうだった」
「ああ・・・良かった」
兵士長はスタスタと部屋の中央へと歩くと、机を挟んで正面に置いてある椅子に腰かける。
「それは、桜という植物が見れたことか? それとも、ブルームとの一夜の方か?」
悪戯っぽく言ったエルヴィンに、少し不満そうに眉根を寄せた。