【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第20章 Until We Meet Again... ※
「ハンジ、お前の考えは?」
それまで一貫して前を見据えていたエルヴィンが、初めて後ろを振り返る。
この間、約5秒。
巨人との距離は、500メートルも無くなっていた。
「私達がここで離脱し、囮になる!! あいつが引き寄せられているのは、方角を決める煙弾だろう!」
エルヴィンが先頭を走る限り、奇行種は彼を標的にし続ける。
「今、私達がエルヴィンを失ったら、兵団そのものの機能を失う!」
リヴァイがいない今、最悪の事態を想定してミケはエルヴィンのそばを離れるべきではない。
やるなら自分達しかいない。
「・・・できるのか、ハンジ?」
「何言ってるの! 巨人の扱いを誰よりも知っているのは、この私だよ」
無鉄砲さからそう言っているのではない。
今、奇行種を相手に一番的確な判断ができるのはハンジだった。
「分かった、ではここで一時離散する。お前達は我々の先を行け!」
「了解!」
ハンジは懐から煙弾銃を取り出すと、わざと奇行種に見えるようにしながら緑色の弾を放った。
すると案の定、それまではエルヴィンに向けられていた奇行種の視線がハンジへと移る。
囮作戦の始まりだった。
「サクラ、私から離れるなよ!!」
「はっ!」
エルヴィン達が速度を緩めて巨人をやり過ごしたのを確認し、煙弾を撃った方向とは逆に進む。
自分達は左へ、団長ら本隊は右へ。
奇行種はハンジにのみ興味を示しているせいか、右方向へ逸れていく本隊に気づくことは無かった。
「どこか適当な建物があったら、そこで戦闘に移る! いつでも戦えるよう、準備しておけ!」
「はい!」
サクラは懐からトリガーを取り出し、すぐにでも立体機動に移れる体勢を取った。