【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第19章 Dear My Father... ※
ペトラが初めてリヴァイに紅茶を淹れたのは、約1年前の春先。
険しい顔で調べ物をしていた兵士長を気遣ってのことだった。
“ お前、紅茶を淹れるのうまいな ”
思いがけずかけられたその一言がとても嬉しくて。
それからというもの、昼食後と夕食後にお茶を淹れるのが日課となった。
普段は近寄りがたいリヴァイが、紅茶を飲む時だけは柔らかい表情になる。
ペトラが話しかけると、少ないながらも返事をしてくれる。
この時間だけはリヴァイと二人きりで過ごせる、特別なものだった。
そんなある日。
実家から届いた荷物の中に、珍しい紅茶が入っていた。
シーナでしか買うことができないものらしく、見た瞬間にリヴァイの顔が頭に浮かんだ。
是非、飲んでもらいたい。
しかし、意外にも紅茶に関しては好みがはっきりしている人だ、もしかしたら口に合わないかもしれない。
まだ夕食までに時間があるけれど、茶葉の香りを嗅いで確かめてもらおう。
そう思い、茶葉の入った入れ物を握りしめながら兵士長の執務室へ向かった。
第一兵舎の二階、その一番端の部屋。
日中は上官達がせわしなく行き来している廊下だが、陽も傾いたこの時間になると人影がほとんどない。
リヴァイは部屋にいるだろうか。
普段とは違う時間帯に訪ねるのは緊張する。
少しだけ胸をドキドキさせながら、ドアをノックしようとした時だった。