【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第19章 Dear My Father... ※
ウォール・マリア崩落から2年後、ペトラは調査兵団に入団した。
成績優秀だった彼女には、憲兵団という道もあった。
しかし、壁の向こうの世界を見てみたいという気持ちを抑えられなかった。
「なんだペトラ、俺のマネして調査兵団に入るのかよ? まさか俺に惚れてんのか?」
「どうやったらそんな発想に辿り着くのよ、オルオ。調査兵団しか入る場所がないアンタとは違うの」
「あ?! その気になりゃ憲兵にだってなれたんだ! 座学の成績が少しばかり足りなかっただけで」
「あー、はいはい」
解散式をもってようやくオルオと離れることが出来るかと思ったら、まさかこの男も調査兵団入団を希望していたとは。
腐れ縁は、やはり切っても切れない・・・というわけか。
オルオは座学こそ落第点だったものの、その他の科目ではトップクラスの成績だった。
協調性に欠ける男だが、兵士としての実力は高い。
「いい? 壁外では絶対に足を引っ張らないでよ」
「そりゃこっちのセリフだ、バーカ! たとえお前が巨人に食われていても、俺は知らんぷりだからな! 」
「はいはい」
この2年、兵士を目指す若者の数は急激に増えた。
というより、人類の活動領域が狭まった事で食糧事情が悪化し、ウォール・マリアの元住民はもちろんのこと、ローゼでもトロスト区のような甕城(外縁都市)の住民は、兵士か生産者の二択しかなかった。
訓練兵を卒業した者のうち、憲兵になれるのは極一部。
調査兵になろうという者もまた、極一部。
ペトラは一握りの人間だけが持つ特権を放棄し、一握りの人間しか生き残ることのできない厳しい道を選択した。
そんな娘に父親は反対こそしたものの、最後はその背中をそっと押した。
そして、一カ月後。
ペトラとオルオは、初めて壁の外に出た。
所属はミケ班。
一年先輩のエルドも一緒だった。
自信はあった。
訓練兵団では立体機動や武術において優れた成績を収めていた自分が、本物の巨人を前にして恐怖するわけがない。
そう思っていた。