【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第15章 A Lullaby In My Heart
満天の星空を見上げながら、サクラは大きく息を吸い込んだ。
普段吸っている空気とは違い、とても澄んでいる。
自由を感じる。
久しぶりの壁外調査。
不思議と緊張や恐怖はなく、むしろ昂揚感すら覚えた。
ハンジ分隊長の影響かな、と顔をほころばせる。
「星がすごいな・・・」
ここは、調査兵団が野営地として使う古城。
古びた石造りだが塔もあって、見張りをするには最適な場所だ。
夜は巨人の脅威はないものの、何があるか分からない。
野営をする時は必ず、交代制で夜通し見張りの兵士を置いていた。
普通は“貧乏クジ”と呼ばれる不寝番だが、サクラは嫌いじゃなかった。
こうして一人静かに空を見上げていると、この世界を独り占めしたような気持ちになる。
深夜3時。
すでに兵士達は寝静まっているはずだが、自分の名を呼ぶ声がして振り返る。
「サクラ」
まさか、こんな時間に自分以外にも起きている人間がいようとは。
驚きながら柵から身を乗り出して下を伺うと、リヴァイがハシゴを昇ってくるのが見えた。
「リヴァイ兵長・・・どうなさったのですか?」
「別に、どうもしない」
リヴァイは軽々と見張り台に上がると、隣に腰を下ろした。
そして、手に持っていた毛布をサクラの肩にかける。
「ここは冷えるんじゃねぇかと思ってな」
「わざわざありがとうございます」
礼を言うと、リヴァイは優しい目をしてサクラの頭を撫でた。
「でも、お休みにならなくて大丈夫ですか?」
今日もリヴァイは誰よりも巨人を倒したと聞いている。
疲れているだろうに・・・
「どうせ夜明けまであと2時間ぐらいだろ? なら、一緒にいる」
寝るには中途半端な時間だ、と事も無げに言う。
「ならば、兵長もお入りください」
サクラは自分の肩にかけられている毛布の半分を兵士長の肩にかけ、胸に頬を寄せるような形で寄り添った。