【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第11章 Hiss And Kiss ※
桜の季節はとうに終わり、初夏を迎えようとしていた。
「エルヴィン団長、第二分隊の報告書であります」
団長室のドアをノックし、返事を待ってから中に入る。
サクラの隣には、入団式を終えたばかりの新兵が二人。
第二分隊に配属となったので、週報の提出がてら団長への挨拶もかねて連れてきていた。
「ああ、サクラ。ご苦労」
エルヴィンがいつものようにデスクから柔和な笑顔を見せる。
新兵達は緊張気味に敬礼をした。
その初々しい姿に思わず笑みが零れる。
自分も1年前は同じだった。
そして、まさか後輩ができるまで生きていられるとは思っていなかった。
同じ102期訓練兵団卒で、成績優秀だったフリーダは最初の壁外遠征で命を落とした。
同期はもう数えるほどしか残っていない。
この後輩達もきっと、これからたくさんの悲しい現実を目の当たりにするだろう。
だから今はなるべく面倒を見てあげたい、そう思っていた。
「確かに報告書を受け取った」
役目を終えると、サクラはさりげなく団長室を見渡した。
もしかしたらリヴァイがいるかもしれない、と少しだけ期待していたのだが、彼だって四六時中ここにいるわけではない。
当然のことながら、その姿はなかった。
「団長、では私達はこれで」
「悪いが、ひとつだけ頼まれてくれるか?」
「はい、もちろん」
するとエルヴィンは机の引き出しから書類を取り出して何かを走り書きすると、封筒に入れてサクラに手渡した。
「これをリヴァイに渡して欲しい。あいつはそうだな、おそらく兵士長室にいるだろう」
「え・・・」
含み笑いを見せるエルヴィンに、サクラは耳まで顔を赤くした。
バ・・・バレていたのか。
そんなに兵長に会いたそうな顔をしていたのだろうか。
まぁ、確かにあの人に会いたいがために、率先して報告書を届ける役目を引き受けてはきたが・・・
気まずさ全開でエルヴィンから書類を受け取り、一礼してから部屋を出た。