【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第9章 The Winds Blow For You ※
「ところで、今来ている客はどのような奴だ?」
「あ? お前さん、連れだと言っていたじゃねぇか」
「チラッと見かけただけだから人違いかもしれないんだ。姿形はどんな男だった?」
「姿形ってそりゃおめぇ・・・兵士で黒髪に氷のような目、それにチビとくりゃあの有名人しかいねぇだろうが」
リヴァイ兵士長。
もうすでに市民の中では英雄として語られていた。
ハンジは唇を噛む。
「・・・そう・・・やっぱ私の連れだね。彼はよくここに来るの?」
「たまに来るんだが参ってるんだよ。あいつと寝た女はだいたい、売り物にならなくされちまうから」
「・・・彼は・・・どんな様子でここに来るの・・・?」
市民の英雄は、人でも殺してきたんじゃないかと思うような殺気をまとって店に入ってくる。
そして、並んでいる女には目もくれず、カウンターに金を置いて一言。
“誰でもいいからよこせ。適当な女がいねぇんなら、男でも構わない”
疑似恋愛や、快楽に更けようという気はまったくない。
金を払う代償として望むのは、ただその行為のみ。
そういった感じだ。
「参ったことに、あの旦那の相手をした女は半殺しにされるか、二度と男を悦ばせることができねぇ体にされちまうんだよ」
「それって・・・」
「それでも金払いはいいし、旦那がくると女どもが喜ぶからな。追い返すわけにはいかない」
「・・・・・・・・・・・・」
「男を悦ばせることができねぇ体になるってのも、旦那の虜になっちまって他の男を満足させる気がなくなっちまうって意味だ」
あのリヴァイが・・・
そんなことを・・・・・・
ハンジの手の中にあるグラスが、グシャリと握りつぶされた。
酒と、ガラスの破片がカウンターの上に飛び散る。
ポン引きはもちろん、他の客や娼婦たちも驚きのあまり言葉を失った。
「・・・で・・・私の友人はいつからこの店に通うようになった?」
ハンジの袖に酒が染みていく。
「いつだったかな・・・確か、3年ぐらい前だったか」
握ったこぶしの中に残っているガラスが皮膚を裂いた。
でもこれくらいの痛みなど、たいしたことない。
「・・・ファーランと・・・イザベルが死んだ時か・・・・・・」
リヴァイの痛みに比べれば・・・