【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第9章 The Winds Blow For You ※
それは、壁外調査から戻った翌日のことだった。
エルヴィンを始め、ハンジ、ミケ、リヴァイなど班長クラスの兵士が、それぞれ殉死した兵士の遺族を弔問する。
それが調査兵団の決まりだった。
夫、子供、孫、恋人、兄弟・・・
どの間柄であっても、大切な人を失った悲しみを間近で見るのはつらい。
時には激しく罵られることもあった。
服を掴まれて泣きじゃくられることもあった。
それでも自分達にできるのはただ、この死を無駄にはしない。
そう約束することだけだった。
「・・・だいじょうぶか」
隣を歩くミケが、ハンジの顔を覗き込む。
最後の家を訪ね終え、兵舎へ戻ろうとする頃にはもうすっかりと夜が更けていた。
「ああ・・・わかってはいたけれど、やはりつらい仕事だね。目の前で泣かれてしまうと・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
ミケはハンジよりも慣れているのか、表情にそこまで変化はない。
しかし、ずっと遠くを見つめている。
その先は暗闇しか広がっていないというのに・・・
突然、ミケがスンッと鼻を鳴らした。
「・・・ミケ? どうしたの」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
足を止めて、じっと路地の裏を見ている。
ここは貧困層が住む下町だ。
路地裏など、まっとうな人間が集まる場所ではない。
「リヴァイがいるようだ」
「リヴァイが?」
今回の遠征で亡くなったリヴァイ班の兵士は、どれもこの地域出身の者ではない。
なのに、何故・・・?
そこは売春宿の看板が並んでいる。
少し前に、ゲルガーが酔っ払いながら言っていた言葉を思い出した。