【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第9章 The Winds Blow For You ※
ハンジがリヴァイに対して違和感を覚えたのは、それからしばらくたったある日のこと。
きっかけは、第18回壁外遠征だった。
この日の目的は、ウォール・マリア奪還のための拠点作り。
しかし、ハンジは密かに自分が考案した捕獲方法で巨人を生け捕りにしようと企んでいた。
もちろんエルヴィンはそんなことなど百も承知で、しっかりとハンジを自分の真横に配置して先手を打つ。
「はぁ・・・壁の中でも外でも私を監視する気かな?」
おかげで巨人の生け捕り作戦が実行できないよと、大げさなため息を吐く。
「何か言ったか、ハンジ」
「いえ、何も!」
極力声を抑えて呟いたつもりだったのに、しっかりと聞こえているとは・・・
うちの団長は鼻が効くばかりでなく、地獄耳でもあるのか。
ハンジは頭を抱えた。
「あれ? そういえばリヴァイは?」
いつもは前列か、中央に陣取っているリヴァイ班の姿が見えない。
するとエルヴィンは遥か後方を指差した。
「あいつには最後列についてもらっている。前回はその場所に壊滅的被害を受けたからな」
「そうなんだ」
「分隊長なのだから、せめて作戦企画書くらい目を通しておけよ」
「あはは、ごめんごめん」
確かに精鋭は一箇所に固めるより、前後に分けて配置した方がいい。
「賢明な判断だと思うよ」
すると、エルヴィンの顔に笑みが浮かんだ。
「ハンジにそう言われるとは、光栄だな」
「な、何?」
まさかそんな反応が返ってくるとは思っておらず、慌ててしまう。
「お前の同調を得ると安心する。俺はハンジの頭脳と分析力に信頼を寄せているからな」
「・・・そ・・・そうなの?」
「だから、くれぐれも単独行動はやめてくれ」
団長の思いがけない言葉に、ハンジの顔が赤くなる。
人を操ることに関しては天才的なエルヴィン。
巧みな話術と少しの笑顔で、ハンジの暴走を未然に防いでしまった。