【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第6章 Untainted, Unbroken ※
手足の末端に違和感を覚えて、サクラは目を覚ました。
どのくらい眠っていたのだろう。
シンと静まり返った医務室に、朝日がカーテンの合間から差し込んでいる。
「・・・っ・・・」
手足の指先が痺れる。
それに股の辺りが痛い。
麻酔が切れたようだ。
なんとか肘を立てて体を起こす。
すると、ベッドから少し離れた所に置いてある椅子に、誰かが座っているのが見えた。
小柄な体。
きちんと整えられた黒髪からのぞく、端正な顔立ち。
それが彼の癖なのだろう、脚を組み、片腕を椅子の背もたれにかけている。
「リヴァイ兵長・・・」
これは夢の続き・・・?
あの荒野で何かを探していた、それがこの幻影を見せているのか。
サクラの声で浅い眠りから覚め、ゆっくりと瞳を開けた。
そして顔を上げてこちらを見ると、太陽の光が目にしみたのか眩しそうな表情を浮かべる。
「・・・どうした?」
どうしたと聞かれても、むしろ質問したいのはサクラだった。
どうして、彼がここにいるのだろう。
ハンジもエルヴィンも、医師もいないのに。
もしかして、ずっとここに・・・?
絶句しているサクラをじっと見ていたリヴァイは、何かに気づいて首をかしげる。
そして、出てきた言葉は意外なものだった。
「小便か」
「へ?」
唐突すぎて、目が点になってしまう。
しかし、リヴァイの方はいたって真面目な顔をしていた。
「水銀の毒は、小便と一緒に排出されるらしい」
「そうなんですか・・・」
「そうだ。だから、少しでも出そうなら、そこにある小便器にさっさと出せ。俺は外にいる」
そう言って椅子から立ち上がったリヴァイを見て、思わず吹き出してしまった。
兵士長は怪訝そうに振り向いたが、サクラの笑顔に安堵したのか少しだけ表情を緩める。
「・・・あの時の兵長と変わらない・・・」
「・・・?」
もう、貴方は忘れているかもしれない。
初陣の日、作戦を終えた後で巨人に殺されそうになった自分を救ってくれた、貴方の第一声。
“ションベンでも漏らしたか?”
粗暴だけど、優しい。