【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第1章 Never Despair
『 Never Despair 』
なぜ、調査兵団を選んだのかと問われれば。
明確な答えなど、なかった。
ただ、自由を求めるがあまり、人間性を捨てて行く人間を見ていたくない。
そんな、漠然とした思いだった。
848年。
全訓練過程を終了し、訓練兵団を卒業したサクラ・ブルームは、所属する兵団を選択する際、迷わずに死亡率が高い調査兵団を選んだ。
成績上位10名に入れなかったため憲兵団への入団は不可能だった。
しかし、駐屯兵団に志願すれば命が危険にさらされる確率は格段に減っていただろう。
3年間、苦楽を共にした訓練兵団の仲間との別れの日。
親友のロゼは、なぜ調査兵団なんかを選択したのか、と疑問を投げかけてきた。
「3年前の私なら迷わずに駐屯兵団を選んでいた」
サクラは、少し寂しそうに微笑みながら言った。
首席で卒業したロゼは、憲兵団に行くという。
「ううん、3年前の私なら、兵士にすらなろうなんて思わなかった」
きっと、普通に成長して、普通に誰かと恋に落ちて、普通に誰かと結ばれて、普通に命を授かって、普通に・・・普通に・・・
「エルヴィン・スミス団長が仰っていたじゃない。最初の壁外遠征で新兵の5割が死ぬって」
「・・・・・・・・・」
希望所属兵団への志願期限の前夜。
不安な表情を浮かべる訓練兵に向かって、エルヴィンはきっぱりと断言した。
調査兵団では、入団から5年の生存率は3割に満たない、と。
金髪で長身、端正な顔立ちのエルヴィンは、表情一つ変えず、さも当たり前のことのように言ってのけた。
それでも、調査兵として心臓を人類のために捧げたいという者は、歓迎する。
「死に急いでどうするの?今からでも考え直した方が・・・」
「ロゼ。私は死ぬことよりも怖いものがある。それは、人間が人間性を失うこと」
「サクラ・・・」
「私は3年前、“あの”場所にいたんだよ。惨劇を目の当たりにした」