第25章 不思議の国のモンダイジ!(アリス ノーマルEND)
「最悪」
授業が終わり、ようやく昼休みが訪れた。
「二度と体育には出席しないから! お昼前にマラソンなんて、どうかしてる! もっと生徒のことを考えてほしい!!」
ただでさえ空腹なのに、長時間走らせるなんて……地獄以外の何ものでもなかった。ほとんど拷問である。
だが、すこぶる機嫌の悪い私とは正反対に、シロは上機嫌のようだ。
「シロ……あなた、よく笑っていられるわね」
「だって、アリスちゃんと体育に出たの久しぶりだったもん。あたしは今、ハッピーだよ」
「そう?」
嬉しいなら何よりである。
その幸せを、少し分けてほしいぐらいだ。
「あ――、俺のメンチカツ!!」
「こら、『チェシャ猫』! 返せ、俺のエビフライ!!」
「ヤダよ――ん!」
あぁ、またやっている。
嘆きの涙を流す同級生に見せつけるように、根古峰 鈴也は奪ったおかずを食べた。
「「あ――ッ!」」
ふふん、とイタズラな笑みを浮かべた鈴也は、指についた油を舌で舐め取る。
そして、何も持っていない手からキャンディーを出して見せた。
「いくらマジックが得意なぼくでも、タネも仕掛けもなしにメンチカツとエビフライを元に戻すことはできない。そこで、ぼくに大事なおかずをくれた優しいきみたちには、ささやかなお礼をしているニャ」
鈴也が彼らの弁当箱の中を指差す。
おかずがなくなって、ぽっかりと空いた箇所にキャンディーが詰められていた。
「ふざけんな――ッ!」
「あめ玉がエビフライの代わりになるか!!」
さすが、一年生は元気だな。
私はお昼前のマラソンで力が尽きているというのに。
たった一つ年が違うだけで、こんなにも体力に差が出るのだろうか。
「小学生でもあんなことしないよ。一コ違うだけで、こんなに違うものなのかな?」
「違うんじゃない?」
どうやら思うところは同じなのに、考えていることは違うようだ。
それでも私は「結局そういうことだろう」と適当に結論づけて返事をする。
とにかくお腹が減っているので、私たちはお昼ご飯を急ぐことにした。
* * *