第24章 私のアリス(帽子屋恋愛END)
「誓いを……立ててくれるんですか? 本当に、私より先に死なない? 病気も事故も、貴女を突然襲い、死へと導くのに?」
「事故なんて、遭わないようにあなたが守ってくれればいいじゃない。病気に罹って死にそうになったら、その前にあなたが殺せばいい」
「そうですね。貴女の言う通りだ」
柔和な笑みは、いつもの遥都先輩だ。
「心変わりをしたら、壊しますよ」
「もちろんよ」
「何に懸けて誓ってくれるんですか?」
「そうね……なら、童話に出てくる『永遠の少女』の名に懸けて」
神も仏も信じない私には、懸けられるものなど持ち合わせていなかった。
だが、それで良かったようだ。
遥都先輩は下ろす。
その手には、シルバーナイフが握られていた。
それを隣へ差し出すと、黒服の男が何も言わずに受け取る。
「主人が人を殺そうとしているのに、その人は何で止めないのよ。人としてどうなの?」
恨みを込めた目で黒服の男を睨むと、遥都先輩が笑った。
「主人の命令は絶対順守、が彼らの美学ですから。例え私が人を殺そうと何をしようと、彼らは命令がなければ動きません。動くとすれば、私が殺されそうになったときぐらいでしょうか。それより……」
遥都先輩が私を抱きしめる。
「貴女が誓いを立てるなら、私も誓いましょう。この狂おしいまでの感情は、一生貴女のモノです。『いかれ帽子屋』の名に懸けて」
「誓いを破ったら、私があなたを殺してもいいの?」
「貴女に殺されるのも、魅力的ですね」
「バカ。そんなことさせない、くらい言ってみなさいよ」
「アリス……もう黙って」
低く名を呼ばれて黙った私に、遥都先輩が口づけた。
そして、私の耳に囁く。
「愛しい、私のアリス……一生、私と終わらないお茶会をしましょう」
【私のアリス/帽子屋恋愛END】