第23章 凶愛の果て(帽子屋悲恋END)
【選択肢】
→①臆病な人ね
②優しい人ね
* * *
「本当に、臆病なのね。そんなに、私がいなくなるのが怖いの?」
「怖いですよ。貴女が、病気や事故で死んでしまうのも、他の男のモノになることも。いつか、私の知らない場所に消えてしまうことも……怖くて仕方がない」
「私が死ねば、あなたは安心できるの?」
「えぇ。貴女が死ねば……私が、貴女を壊せば……」
「でも……」
私は遥都先輩の後ろを見る。
そこには、黒服の男がいた。
この状況に何も言わず、ただ黙ってそこにいる。
「気にする必要はありませんよ。黒服は私が命じない限り動きません。たとえ私が人を殺そうとしても……殺しても……」
だったら――……。
「殺せばいい。それが遥都先輩の愛なら、私を壊してもいいよ」
「アリス……」
少し驚いた顔をしたが、彼はすぐに愛しそうに目を細めた。
「その代わり、後悔しないで。私を壊したこと……絶対に」
「……後悔なんて、するはずがない……」
首筋の刃が滑る。
私の首から迸る鮮血が、遥都先輩を汚した。
それをどこか、嬉しく思う。
ずっと、彼が遠ざけて来たもの。
でも、遥都先輩は私を遠ざけなかった。
躊躇したのは、私のことが好きだから。
私は力の入らない腕をどうにか伸ばし、遥都先輩の頬に触れる。
血に濡れた手が遥都先輩の頬を汚した。
その手に彼は触れ、嬉しそうに微笑む。
「……あなたはずっと、私に縛られて生きるの……一生、死ぬまで私から逃げられない……」
意識が遠くなる。
身体が寒さに震えた。
そんな私の身体を温めるように、遥都先輩が抱きしめてくれる。
「……それは、とても素晴らしい人生ですね」
【凶愛の果て/帽子屋悲恋END】