第22章 帽子屋ルート(分岐)
「本当に大切な『モノ』だけを愛したい。私は臆病な人間ですから……壊して傍に置いておきたい。でも、どうしてでしょうか? 貴女を『壊す』ことに、私は躊躇いを覚えてしまう。だから、間に合ううちに手放しておきたかった」
遥都先輩が目を伏せる。
一拍置いて、彼は再び私に目を向けた。
「私の話は……これでお終いです」
「……っ」
ひやりと、私の首筋に硬いものが当てられる。
それが何なのかは分からなかったが、鋭い感触から刃物であることは分かった。
「……アリス……」
耳元で名を囁かれて、私の背筋がゾクリとする。
「どうして、急にこんな……」
「……急、ですか。貴女にはそう見えるかもしれませんが、私にとっては、急でもなんでもありません。貴女の存在は私の中で大きくなる一方で……それなのに、私らしくもない。私は貴女を、手放せずにいた。ですが昼間、あの男が貴女に乱暴な態度をとった……」
「あの男?」
昼間会った男と言えば、遥都先輩以外では生徒指導の教師しか思いつかなかった。
「壊されるかと思いました……貴女を。壊してしまわないといけない、と思いました。でも……あのときまでは、まだ、躊躇している自分がいたんです」
貴女は、もうここに来てはいけません。
遥都先輩がそう言ったのは、『警告』だった?
「でも今は、貴女を……私のモノにしたい。躊躇いも何も存在しない。壊して、ずっと……私の傍に……」
「ぃた……っ」
首筋に触れた刃が食い込む。
吐息が掛かりそうなほどに顔が迫り、唇が触れた。
「……アリス……」
狂おしいほどに甘い声音に、胸が締めつけられる。
どうしたらいいのか。
どうしてあげればいいのか。
私は――……。
【選択肢】
①臆病な人ね…62ページ
②優しい人ね…63ページ