第22章 帽子屋ルート(分岐)
沈黙を破ったのは遥都先輩だった。
遥都先輩は階段を上り、私の横を通り抜けて屋上に足を踏み入れる。
それを追って、私も屋上に戻った。
バタンッ…。
再びの重たい沈黙。
「……私も、もうここへは来ないつもりでした。それでも……最後にもう一度だけ、貴女と過ごしたこの屋上を見たいと思ったのですが……どうやら間違っていたようですね……」
「何が……」
私に背を向ける彼の表情は見えない。
「何が、間違いなの……?」
その様子が拒絶されているような気がして悲しかった。
そして、それ以上に悔しかった。
拒絶されている理由が分からなくて。
とうとう、堪えていた涙が頬を伝う。
そんな自分が惨めで、私は乱暴にそれを拭った。
「ねぇ、何が間違いなのっ!? そんなに私に会いたくなかった!? そんなに私が嫌い? 顔も見たくないくらいに? そんなに私のこと……っ」
興奮しているせいで息が続かなくなり、私は深く息を吸った。
駄目だ。
気づいてしまった。
彼に嫌われた。
その事実が私の心の奥底に、大きな波紋を広げながら沈んでいく。
嫌われたくない。
もうこれ以上、嫌われたくないのに。
「…………ない、で」
こんなにもみっともない自分がいるなんて、気づかなかった。
「……嫌いに……ならないで……お願い……だ……っ!?」
その先の言葉は続かなかった。
息を呑む間もなく、私は屋上のドアに張りつけられる。
「遥都、せんぱ……んっ!」
手首を強く握られ、私は唇を奪われた。
息継ぎが上手くできず、頭の芯が甘く痺れる。
何が起こっているのかが分からず、私はこの状況を受け入れることしかできなかった。
ようやく解放されて息を吐くと、遥都先輩はいつもとは違う、どこか怒りを孕んだ熱い眼差しを私に向けた。