第22章 帽子屋ルート(分岐)
【選択肢】
①遥都先輩とのことを話す
→②遥都先輩とのことを話さない
* * *
「……別に、何でもない」
シロに声を掛けてもらったことで、少し冷静になれた。
「はぁ……」
今度は気分が落ちてしまう。
なぜ、遥都先輩は『来ない』ように言ったのか。
やはり、はっきりさせないと落ち着かない。
「アリスちゃん、どこに行くの?」
「屋上」
「え、何で?」
何で? 決まっている。
遥都先輩を問い質(ただ)しに行くのだ。
だが、私はそこまでシロに言わなかった。
* * *
委員会に行くシロと別れて、私は屋上へ向かった。
持ったままにしていた鍵で屋上のドアを開ける。
ギ…と重たい音を立て、今度はすんなりと開いた。
夕焼けに照らされて朱色に染まる屋上に、期待していた人物はいない。
グラウンドから聞こえる野球部の掛け声や、帰宅する生徒の談笑が遠く聞こえ、寂しさが胸を締め上げる。
バカみたいだ。こんなところまで来るなんて。
「帰ろ……」
私は屋上のドアを開ける。
「あ……」
階段のすぐ下にいたのは、遥都先輩だった。
「アリス……」
遥都先輩の姿を見ホッとしている自分に気がついた。
会いたかった。
そう、思った。
「ここには来ないように言ったはずですよ?」
厳しく言われ、私は一瞬怯んだ。
だが、ここで負けるわけにはいかない。
「それを聞くかどうか決めるのは私だもの。遥都先輩が決めることじゃないでしょ」
私の反論に遥都先輩が目を丸くする。
言い返されるとは思わなかったのだろうか。
虚勢ではあったが、一応の効果はあったようだ。
「…………」
「…………」
しばらく見つめ合う、というよりは睨み合う。
沈黙が降りる。
屋上のドアから入り込む朱い夕日の光が私たちを照らした。