第21章 白ウサギの正義(白ウサギEND 帽子屋ver.)
「遥都先輩!?」
力が抜けて重たくなった遥都先輩を抱えながら、私は起き上がる。
「遥都先輩! 遥都先輩、しっかりして!!」
遥都先輩の身体を揺するたびに、夥(おびただ)しい量の血液が零れていく。
背中には、シロが刺したらしい大きなハサミが突き立てられていた。
これが致命傷になってしまったのだと、混乱する頭が理解する。
「アリスちゃん、もう諦めた方がいいよ。あたしは最初からこうするつもりだったし、的幡先輩だって、あたしが一緒に来てることを知ったときから、こうなることを望んでいたんだから」
人を殺したにも関わらず、シロは淡々と語った。
望んでいた? 私を殺さないために?
私が、何も考えずに来てしまったから。
遥都先輩の気遣いも、シロの心配も。
私が理解しようとしなかったから。
もしそれが本当だとしたら――……。
時間は戻らない。たとえ、時計の針が逆回転を始めても。
帽子屋を殺したのは白ウサギじゃない。
帽子屋を殺したのは、アリス。
無知なアリスが、帽子屋を殺した。
アリスと帽子屋のお茶会は、ここで本当に終わりを告げた。
そしてもう二度と、始まることはない。
「い、いやぁあぁあぁぁぁ――――――――ッ!」
【白ウサギの正義/白ウサギEND 帽子屋ver.】