第21章 白ウサギの正義(白ウサギEND 帽子屋ver.)
「でも、遥都先輩、私に言ったじゃない。大切なものが損なわれたら悲しいって言った私に。『その答えが私と貴女を隔てる、決定的な一線』だって。それじゃあ、話が違う」
「違わないよ」
落ち着いた、シロの声。
シロが遥都先輩と過ごした時間なんて、無いに等しいはず。
けれど、シロより遥都先輩と多くの時間を共有したはずの私以上に、彼女は彼を理解していた。
「あたしだったら、大切なものは傍に置いて、傷つけたり壊そうとしたりする人から、どんな手を使っても絶対に守る。もし傷つけられたり、ましてや壊されたりしたら、どんな手を使っても報復する。それがあたしのやり方。でも、的幡先輩はあたしとは違う。傷つけられることが怖くて、壊されることが怖いから……」
「私は先に壊しておくのです。粉々に壊して、傍に置いておく。そうしておけば、傷つけられることにも、壊されることにも、怯えずに済みます」
「そんな……」
それは、大切にしていると言えるのだろうか?
それは、守ると言えるのだろうか?
「物ならば『壊して』おけば安心できます。けれど、『人』はどうしようもできない。『壊して』しまうと、それは犯罪。騒ぎになってしまいますから」
騒ぎになってしまうどころの話ではない。
この話の流れでいけば、人を『壊す』ことはイコール『殺す』と言うことだ。
それを『騒ぎ』の言葉一つで済ませてしまう遥都先輩が恐ろしかった。