第17章 白ウサギの崩壊(白ウサギEND チェシャ猫ver.)
私の叫びにもシロは小さく首を傾けただけで、動じた様子はない。
シロは震える私の手を握り、慈愛に満ちた表情で微笑んだ。
「アリスちゃん。あたしね、アリスちゃんのことが好きなの。だから、アリスちゃんのためならなんでもするよ」
そこまで言って、シロの顔に暗い陰が射す。
「アリスちゃんを傷つけた人間は絶対にゆるさない。根古峰くんも他の三人も、アリスちゃんを階段から突き落としたんだもん。死んで当然じゃない」
死、という言葉を、シロはこのとき初めて使った。
鈴也たちの死を、ここで初めて肯定したのだ。
友人の突然の死を受け入れられず、私は彼女の握る自分の手に視線を落とす。
すると、シロの手がすぐに離れ、私の頬に触れた。
彼女の手から解放された私の手には、べっとりと血が付着している。
頬に触れたシロは、恐怖で彼女を見られない私の顔を上向かせ、無理やり視線を合わせた。
「ごめんね、守ってあげられなくて。でも、次は必ず守るから。その次も、次の次も、アリスちゃんが寿命で死ぬまで、ずっと……」
どこまでも優しいシロの言葉に、私の目からは知らずに涙が流れた。
「死んだら、アリスちゃんはあたしと結婚してくれるんだもんね。あたし、絶対男の子に生まれてくる。そして絶対、アリスちゃんを見つけるから。だから……」
怯えでカタカタと歯が音を立てる。
いつからだろう。
いつから、シロはこんなに壊れていた?
壊れた彼女を前に何も言えない私の髪を、シロは丁寧に撫でた。
「……シロ……」
呆然と自分の名を呼ぶ私を愛おしそうに見つめ、もう一度私の身体を抱きしめたシロは、甘い声音で続けた。
「ずっとずーっと……一緒だよ……」
【白ウサギの崩壊/白ウサギEND チェシャ猫ver.】