第17章 白ウサギの崩壊(白ウサギEND チェシャ猫ver.)
私たちは帰り支度を整え、教室を出た。
「ごめんね。今日、用事があるから」
「職員室へ呼び出されたのは私なんだから、シロが気にすることないじゃない」
普段からちょっと授業中に居眠りして、ちょっと授業をサボっているだけなのだが。
別に職員室へ呼び出して、指導をする必要なんてないのに。
「でも、少し面倒ね。私も帰ろうかな」
「職員室は?」
「パス」
短く答える。
わざわざ説教されると分かっているのだから、行く必要もないと思ったのだ。
「やった!」
小さく喜ぶシロと二人で階段へ向かう。
すると、階下からバタバタと足音が聞こえてきた。
「なんだか、ちょっと騒がしいね」
足音の合い間で「キャッ」、「うわぁっ」と声が上がっていた。
「待て待て待て~ぃ!」
聞き慣れた声が耳に届く。
どうやら鈴也がまたやらかしているようだ。彼と同級生らしい男子生徒が、全速力で逃げ回っている。
「こっちに来るなぁ――ッ!」
「ギャ――――ッ!」
「捕まってたまるかぁ――ッ!」
なぜ逃げているのかは分からないが、どうせ下らない理由だろう。
そんなことを考えながら、私はシロと階段を下り始めた。
すると、先ほどの鈴也たちの声がこちらへ近づいてくる。
男子生徒が逃げ惑いながら大急ぎで階段を駆け上がってきた。
男子生徒たちのこの様子では、私のことは目に入っていないだろう。
……おそらく、それが原因だったのだと思う。
――ドンッ
男子生徒の一人と、すれ違いざまに肩がぶつかった。
勢いよくぶつかったせいで、私の身体はバランスを失う。
ずるりと、階段から足が滑った。
「あっ……」
落ちる、と思ったときにはもう遅い。
まだ数段も下りておらず、高い位置からの落下なのに、どこかゆっくりと感じられた。
「アリスッ!」
「アリスちゃんッ!」
シロと鈴也の声が遠くに聞こえる。
視界が、暗転した。
* * *