第16章 イタズラ猫の遊び(チェシャ猫友情END)
私たちは帰り支度を整え、教室を出た。
「ごめんね。今日、用事があるから」
「職員室へ呼び出されたのは私なんだから、シロが気にすることないじゃない」
普段からちょっと授業中に居眠りして、ちょっと授業をサボっているだけなのだが。
別に職員室へ呼び出して、指導をする必要なんてないのに。
「でも、少し面倒ね。私も帰ろうかな」
「職員室は?」
「パス」
短く答える。
わざわざ説教されると分かっているのだから、行く必要もないと思ったのだ。
「やった!」
こうして私は、小さく喜びの声を上げるシロと二人で階段へ向かった。
階段近くに来ると、階下からバタバタと足音が聞こえる。
「なんだか、ちょっと騒がしいね」
足音の合い間で「キャッ」、「うわぁっ」と声が上がっていた。
「待て待て待て~ぃ!」
どうやら騒ぎの原因は鈴也のようだ。
彼と同級生らしい男子生徒が、鈴也から全速力で逃げ回っている。
「こっちに来るなぁ――ッ!」
「ギャ――――ッ!」
「捕まってたまるかぁ――ッ!」
なぜ逃げているのかは分からないが、どうせ下らない理由だろう。
捕まればとんでもない目に遭わされることは目に見えて分かるが、鈴也の足の速さを考えると、それも時間の問題だ。
鈴也に捕まった彼らを想像してみると、ちょっと笑えた。
またネコのように笑いながら、「やってやったニャ!」と、得意げにポーズを決めるのだろう。
階段を下りきると、走ってくる鈴也と目が合った。
「あ、アリスだ。ぼくがあげたストラップつけた?」
「スマホにつけた」
スマートフォンを取り出すと、それに合わせて薄紫色のネコが揺れる。
それを見た鈴也は、嬉しそうに笑った。
「アリス、ばいニャーン!!」
大げさに鈴也が手を振ってきたので、私も手を振り返って応じた。
「ほどほどにね」
苦笑しながらそう言うと、彼は「任せるニャ!」と笑って去って行く。
小さくなっていく鈴也の後姿を見送って、私はシロと下駄箱へ向かったのだった。
【イタズラ猫の遊び/チェシャ猫友情END】