第14章 眠りネズミルート(2)
【選択肢】
(1)放っておく
→(2)放っておかない
* * *
そう思ったが、私は心の中で首を振った。
放っておいてもいいのだが、食べている間、ずっと祢津の顔がちらつきそうだ。
そんな食事とも言えない食事などごめんである。
「……このまま起きないなら、今後いっさい、あなたと口を利かないから」
子ども染みているとは思ったが、試しに口にしてみる。
突如、目を開いた祢津が勢いよく身を起こした。その拍子に、私の額と祢津の額が衝突する。
空腹も吹き飛ぶ痛みに私は呻いた。
「……ごめん、アリサ。大丈夫?」
「大丈夫なわけないでしょ……急に起きないでよ」
額を押さえて痛みをやり過ごそうとする私とは反対に、彼は痛がる素振りを見せず、心配そうに眉を下げた。
どれだけの石頭だ。
いっさい口を利かない、という言葉にどれだけかの効力があったのかは知らないが、祢津は渋々とベッドから降りる。
だが、その行動も「魔法少女」に似ているせいだと思うと、少し複雑だった。
そこで不意に、寝る前にもらったマスコットの存在を思い出す。
「そうだ、祢津。これ、何なの?」
とりあえずポケットに入れていた、例のネズミのマスコットを取り出した。
「それはね、アリサを魔法少女にした、ネズミのチュー助さんだよ」
なぜネズミに「さん」をつけているのか。
「あれ? アリサなのにチュー助さんを知らないの?」
何度も言うようだが、私は祢津の知っている魔法少女ではないのだ。
知っているわけがない。
呆れ顔の私に何を勘違いしたのか、ヘラっとしていた顔が引き締まる。
「アリサとチュー助さんは秋葉原で出会うんだけど、メイド喫茶で働いていたアリサをしつこくナンパしていた男たちから助けたのがチュー助さんなんだ。え? ネズミがどうやって助けたのかって? 聞いて驚くんだ、アリサ! あ、今の『アリサ』はキミのことだよ? あぁ、そこは聞いてないって? ごめんごめん。それで……どこまで話したんだっけ? そうそう、アリサとチュー助さんが出会ったのは秋葉原で、メイド喫茶で働いていたところを……あれ? ここは話した?」