第6章 屋上の帽子屋(帽子屋ルート)
「先日、言われた通り授業に参加しましたが、先生には追い出されてしまいまして」
「それはお前が、教室で茶を飲むからだ!」
「私としては屋上で風を感じながら飲みたいのです。それでも、先生が熱心に通われるので、教室という狭い空間で我慢して差し上げたのですが?」
紙コップの紅茶には何とも思っていないのか。
教室で紅茶を飲むことは譲歩に入るらしい。
「的幡! お前は授業を何だと思っているんだ!?」
「先生、そんなに声を荒げては、身体に毒です。少し落ち着かれては?」
そう言って、遥都先輩は紅茶を口に含む。
「あ、あぁ、そうだな。俺も最近高血圧で……って、お前のせいだろうが!!」
あまりの自然な流れに、生徒指導もはっと我に返った様子だ。
残念。今の流れで帰ってくれれば良かったのに。
「お前は、2年の藤城 ありすだな」
「そうですけど……」
まずい、矛先がこちらにも向いてしまった。
「『アリス』と『帽子屋』の茶会もこれで終いだ! さぁ、来い!!」
生徒指導はズカズカと私たちに近づいてきた。
「きゃ……っ」
生徒指導に腕を掴まれ、私は無理やり立たされる。乱暴な生徒指導の手に、腕が痛み、へし折れてしまいそうだ。
そのときだった。
黒服の男が生徒指導の肩を掴み、一息に私と引き離す。
そのまま生徒指導を冷たいコンクリートの上に押さえつけ、動けなくした。