第5章 保健室のネズミ(眠りネズミルート)
「あ、アリサだ。おはよう」
「アリサじゃなくて、アリスだから」
彼は祢津(ねづ)未波(みなみ)、隣のクラスの生徒だ。
美少女アニメやゲームが好きなオタク。
『魔法少女ミラクル☆アリサ』の主人公に私が似ているという理由で、私のことを『アリサ』と呼ぶ。
夜中までアニメを観たりゲームをしたりしているせいで、いつでもどこでも眠い彼は「眠りネズミ」と呼ばれる問題児だ。
「ちょっと、祢津。いい加減、私をアリサと呼ぶのは止めてくれない?」
「ヤダよ。アリサはアリサじゃん」
違う。断じて違う。
私は魔法など使えないし、頭の悪そうな組織とも戦わない。
しかし祢津は、私の反論を笑顔で押し切った。
まったく、人の名前を何だと思っているのか。
「先生も何か言って下さいよ」
ここで養護教諭である大人に加勢を――……。
「先生ならお昼ご飯を買いに行ったよ」
……してもらえなかった。
私はガックリと肩を落とす。
「まぁまぁ、アリサ。これあげるから元気出して? ね? カバンにつけると、ご利益あるよ」
祢津が私の手を取り、何かを握らせる。
開いてみると、そこには仁王立ちしたネズミのマスコットが乗っていた。
「……な」
「ほら、こっちに来て。一緒に寝よう」
「はぁ?」
何これ、と聞くより早く、祢津は保健室の一番奥にある祢津専用(本人談)のベッドへ引っ張る。
私は――……。
【選択肢】
①祢津と寝る…30ページ
②祢津と寝ない…31ページ