第4章 中庭の猫(チェシャ猫ルート)
「な、何でここに……」
鈴也が問題児なせいか、男子生徒は怯えだした。
「ぼくの方が先にいたんだよ?」
そう言って、彼は私の首に腕を回した。
見せつけるように頬を寄せられると、鈴也から陽だまりと新緑の香りがする。
「ぼくのアリスに告白なんて、ずいぶんな勇気だ。当然、覚悟はできてるんだよね?」
「も、申し訳ありませんでした――――――ッ!」
何に対しての覚悟が必要なのか尋ねることなく、男子生徒は脱兎の勢いで去って行った。
それを見送り、私はオレンジジュースのパックにストローを刺す。
一口飲んで口を離すと、抱きついたままの鈴也が少し身を乗り出してストローを口に含んだ。
勝手に飲まれたので抗議しようとすると、それより早く彼が口を開いた。
「アリスから会いに来てくれて、嬉しい」
「別に、会いに来たわけじゃないし。それに鈴也のモノになった覚えもないんだけど」
「つれないなぁ。アリスはぼくの一番のお気に入りなんだからさ」
そう言った鈴也は私を解放すると、パッと目の前に右手を突き出してきた。
左に水平移動する彼の手を目で追うと、そこから一瞬でトランプカードを出てくる。
「……ハートの、2……?」
マジックが得意なのは知っているが、そこで出すのはあえてハートの2なのか。
得意げな笑みを浮かべる彼がくるりと手の甲を向け、再び手のひらを見せたときには、もうハートの2は消えていた。
「あ、あれ?」
ハートの2は?
どこへ消えたのかと考えたのは一瞬のこと。
鈴也は右手を握り、左手の人差し指で軽くそれを叩く。
「ニャン、ニャン、ニャニャーン!」
不可解な呪文を唱えた彼は、パチンッと指を鳴らした。
そして、何も持っていないはずの拳を振り上げ、何かを宙に放つ。
何もないはずなのに、宙で何かが光りそのまま落ちてきた。
私はその『何か』を――……。
【選択肢】
①受け止める…24ページ
②受け止めない…26ページ