第3章 惚れたら負け
あ、この感覚久しぶりだ。
中学校のジャージを来て、二年前にお気に入りだったサンダルとポニーテールの私が夜中の公園をブラついていた。
当てもなく、ただブラブラと。
カップルや部活帰りの学生とすれ違う度に自分の中のコンプレックスが刺激されて、足取りが重くなっていった。
足取りは重いはずなのに、何故か私の足はフラフラと徘徊を続けて、止まらない。
後どれくらい歩いたらどこかに座って休んで楽になれるの?
不意にそんな考えが浮かんで、それなのに私の足は止まらない。
ひたすらフラフラ、ブラブラ。
どのくらい歩けば自分の気が済んで自分は安らげるのか、自分でわからない時点でここが現実の世界でないことに気付くべきだった。
これ、夢だ。
自分で夢を夢だと認識する夢は、もしかして初めてみたかもしれない。
「..ひまり」
夢の中のその人は、二年前と変わらない声と笑顔で私を呼んだ。
振り返れば、そこには予想通りの人物が。
「徹?」
なんで、どうして。
色々と言葉は出てきそうだったけど、でもこれは夢だから何でもありか、と思い直して結局何も言わなかった。
徹も何も言わない。
ただ黙ってお互いがお互いを見つめていた。
「ひまり、あのさ」
徹は私の名前を呼んで何かを発した。
その言葉が聞き取れずに私は彼に聞き返す。
「え?なんて言ったの徹」
「だから、」
だから、の後に彼が発した言葉もわからなかった。
「ごめん、聞こえないって」
それでもやっぱり彼の声が聞こえない。
周りの雑音は凄く近くから響くのに。
「..ひまり、俺_」