第2章 想い
『……遅いわね』
私は車のハンドルに寄りかかりながら
ぼそっと呟く
家から車を走らせて30分くらいのとこにある
ある人の家の前に車を停めているのだが…
『もう約束の時間過ぎてるじゃない』
8時に家の前に集合のはずなのに
もう20分も過ぎている
私はスマホを開き
その人の携帯に電話をかける
プルルルル…
【あ、もしもし?】
出るのはやいな
『あの、いつになったら出てくるんですか』
【ごめん!もうちょっと待って!寝坊しちゃって…すぐ行くから!】
『急いでください』
私はすぐに電話を切った
『っはーっ!』
(電話で話すだけでもこんなにドキドキするとは…)
私はうるさい心臓を落ち着かせるために深呼吸をする
と
助手席のドアが開き
「お待たせ!」
と入ってきた
そう
私の
心を奪った彼が━━━
声優の
細谷佳正━━━━━━
『うわっ!び、びっくりさせないでください』
「あ、ごめんごめん
でも新鮮
普段梢さんってクールだから
驚いたとこ初めて見た」
私はとたんに恥ずかしくなり
『…はやくシートベルト着けてください』
スルーしたのだが、
本人は無視されたことを気にしてないらしく
はいはい、と言いながらシートベルトを着けた
『今日は着いたらすぐアフレコですから
喉、潤しておいた方がいいですよ』
私は車を走らせながら、
隣にいる細谷さんに呼び掛ける
「おっけー
…って、やば、飴忘れた…」
自分のカバンを確認してうなだれる細谷さんを見て
『そうだろうと思って、私、飴持ってきましたから』
そう言いながら
右手はハンドルを握ったまま
左手でカバンをあさり
飴の入った袋を手渡した