第2章 想い
『これからはちゃんと自分で持ってきてくださいよ』
「はーい」
そんな会話をしている間に
アフレコスタジオのあるビルに着き、入口で車を停めた
『私は近くの駐車場に停めてくるので、細谷さんは先に行っててください』
そう伝えて細谷さんを降ろし、
私はコインパーキングに車を入れ
はや歩きで細谷さんを追う
自動ドアを抜け、エレベーターで5階まで上がる
チーン
扉が開き、降りた瞬間
「わっ!!」
『ぎゃっ!!』
いきなり後ろから背中を押されカエルが潰されるような声が出てしまった
『ちょっと宮野くん!心臓が出るかと思ったじゃない!』
こんなことをするのは高校の同級生で仲も良かった宮野くんしかいない
「いや~今日も梢ちゃんは美人だね~」
『人の話聞いてる!?』
「うんうん、声も綺麗だ♪」
『まったく…』
宮野くんは声優界のトップにある男だけど…
高校の時からいつも私を驚かせてばっかり
ずっとやられてたから慣れてたけど、
久々だったもんで耐性が薄くなっていたようだ
「あれー細谷さんはー?」
『先にスタジオにはいってるはずよ』
「そっかー」
『宮野くんも今日アフレコあるの?』
「俺はないよー
梢ちゃんに会いたくてね?」
『まったく…あなた既婚者でしょ?』
「てへ」
この人は決して浮気をしようと考えてる訳ではなく
これが彼の人とのコミュニケーションの取り方らしい