第2章 出会い
私はとんでもない所に来てしまったのかもしれない。
金髪の青年に付いてくるよう言われ、大きな広間に案内された。
そこにはたくさんのイケメン達と可愛い女性が一人。しかも、上座にいるのは織田信長と言うらしい。
「…あの有名な戦国武将と、同じ名前」
ポツリと呟いた言葉を、その場にいたものは皆聞き逃さない。
「ほう、俺のことを知っているのか」
「いえ、貴方のことは知りませんけど」
ニヤリと面白そうに笑う信長を見て、さくらは真顔できっぱりと答える。そのやり取りを見ていた周りの人たちは「プッ」と笑った。
「あんた、信長様相手に凄いね」
「まあいいじゃないか。俺は気に入ったぞ!」
笑いを堪えて可笑しそうに言う金髪の青年と、愉快そうに笑う隻眼の男性。そして唯一その場にいた女の人も話しかけてきた。
「あのね、信長様は、あの有名な織田信長なんだよ」
クスクスと笑いながら言うその姿はとても可愛かった。
「で、この隻眼の人が、伊達政宗」
それから石田三成に明智光秀、豊臣秀吉、と次々イケメン達の紹介を決して頼んだわけではないのだが女の人はペラペラと話していく。
…いいのか、個人情報漏らして。
そして何故か豊臣秀吉だけ他の人の紹介より長くて、惚気も入っていた気がするがそんな事はどうでもいい。歴史で学んだ人物名に軽く目眩がした。
なんでこんなに戦国武将と同姓同名がいるのだ、と。
「さて問題です!そこの金髪の人は誰だと思う?」
ニッコリと笑いながらいきなり聞いてくる。
知るかそんなの、と言いたいところだが、初対面でそれは流石に失礼なのでやめといた。
そして考える。これだけ有名な名前が揃っているのだ。彼も恐らく有名な戦国武将の名前なのだろう。…と見せかけて実は違うのかもしれない。歴史の教科書にすら載っていない武将とか。
しかし、そんな思考は一瞬にして崩れた。
「ヒントはね、鳴かぬなら、鳴くまで待とう、ホトトギス、だよ!」
有名なその句を、知らないものなどいない。
「徳川、…家康」
驚いた表情で、でも確かにその名を呟いた。