第2章 出会い
暖かな日差しが部屋に差し込み、眠っていたさくらの瞼がピクリと動く。それは目覚める合図でもあった。
その少しの変化に気づいた家康は、本を読むのを中断し、側に寄った。
「………ここは…」
「やっと、起きた」
声のした方を見ると、金色の髪に吸い込まれそうなほど綺麗な翠の瞳をした青年がいた。
「ここは安土城。あんたは三日間ずっと寝てた」
「三日……。…え、三日?!いや、それよりも…安土城?って言うか誰??」
青年の言葉にどこからつっこめばいいのか分からない。混乱しているさくらを無視して、家康はいくつか質問する。
「どこか体調悪いとこ、ない?」
「…ない、です」
「そう。もし体調悪くなったら言って。あとから何かあっても面倒だから」
そう言って立ち上がると、襖に手をかけ部屋を出ていこうとする。
「あ、あの…!貴方は?」
「……なんであんたに名前教えないといけないの」
そう言って部屋を出ていってしまうが、何かを思い出したようにすぐに引き返し、さくらに話しかける。
「まだ暫く休んでて。…あと、この部屋からは絶対に出ないで」
後で迎えに来るから、と付け足し、今度こそ部屋を出ていく。
家康がそのまま向かった先は皆が待っている広間だった。
「彼女、目を覚ましました」
「そうか。で、あの娘はどうだった?」
「体調は何ともないそうです。三日寝てたと言ったら驚いてました」
一呼吸おいて言葉を続ける。
「あと…彼女、ちょっと痩せ過ぎです」
「…やはりな」
信長は、さくらが自分の腕におさまった時に痩せ過ぎだと気づいた。
だからこそ家康にさくらを診るよう指示を出したのだ。眉を寄せ、舞の方を見る。
「舞、五百年後の未来では、食べ物に不自由する者が多いのか?」
「え?そんな事ないですよ。この時代より食べ物は豊富ですし。まぁ貧しい人も時にはいますけど……」
「そうか。家康、あの娘はお前に任せる。暫く様子を見ろ」
「は?なんで俺が……」
「あの娘、どう見ても健康そうには見えん。だからお前が一番適任だろう」
これは命令だ、と信長に言われると、家康は渋々了承した。